『違国日記』という漫画について
こんにちは
最近は四国に行って何もせず和歌山に渡ったり、京都で焼き肉をご馳走になったり、カメラ買ったり、ペルソナ無双が思ってたより面白くてうれしかったりしてました。
無印と違って敵が完全な悪ではなく、それぞれの立場が描かれているためキャラが非常に魅力的でした。
あとソフィアがマジでかわいい。クマが美少女になったら絶対かわいいですよね。
といってもペルソナ無双は本家ペルソナ5の後日譚的な作品であり、単体でのプレイは正直おすすめできないです。微塵も愛着がない仲間と旅行なんてしたくないでしょ。
反面、本家ペルソナ5をプレイした人であれば結構楽しめるんじゃないかなーと思います。
ペルソナ無双の話はこれくらいにして、今回はヤマシタトモコの漫画『違国日記』について話します。
あらすじ
少女小説家の高代槙生(35)は
姉夫婦の葬式で遺児の・朝(15)が
親戚間をたらい回しにされているのを
見過ごせず、勢いで引き取ることにした。
しかし姪を連れ帰ったものの、
翌日には我に返り、持ち前の人見知りが発動。
槙生は、誰かと暮らすのには不向きな
自分の性格を忘れていた……。
対する朝は、人見知りもなく
“大人らしくない大人”・槙生との暮らしを
物珍しくも素直に受け止めていく。
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この漫画を読んだ時、僕が思ったのは「とても良いけど、良さを言葉に表すのが難しい。」
最近この漫画を人に勧める機会があったんですけど、「エモい」しか言えないんですよ。
「エモい」のはその通りなんですけど、もっと賢い言い回し、したいじゃないですか。
ということで賢い言い回し、していきます。
この漫画は前提として、読む人によってどこに重点を置くかが違うような気がします。
なのでこれはあくまで555Umauma視点です。
つまんなかったからってブロックしないでください。
この漫画の面白さを一言でまとめると、
「共感できる人物には共感できるしそうでなくてもクソほど解像度の高い人間ドラマを楽しめる」
です。
まずこの漫画は、登場人物が極めて「現実の人間らしい」です。
基本的にフィクションの登場人物って読み手にわかりやすく描かれますよね。
怒っている時には言葉遣いが乱暴になり、口を尖らせ、眉間にしわが寄り、顔から湯気が出ます。
表には出ない場合でも、独白とか他キャラの台詞等でキャラの感情ってわかりますよね。
例えば僕の大好きな漫画である『チェンソーマン』の作者、藤本タツキ先生の描くメインキャラは大体、動機や人間性がはっきりしています(展開は全く読めないですが)。
主人公のデンジは自分の欲求を満たすために生きていますし、裏主人公の早川パイセンは復讐のために銃の悪魔を追っています。
彼らが何を考えているのか分かるから、キャラが生き生きとしている。凄く親しみが湧くんです。
『チェンソーマン』にもマキマさんみたいな例外はいますが、極端な話『チェンソーマン』の登場人物全員がマキマさんみたいな立ち振る舞いしてたら絶対意味不明ですよね。
でもマキマさんって割と現実の人間に近いところがあると思うんですよ。
現実の人間は何を考えているのかなんて正確には分からないですからね。
フィクションの登場人物を現実の人間に近づけようとする時、感情を誇張しないことって1つの方法なんじゃないかなーと思います。
けど感情が完全に分からなかったら只の意味不明なキャラが出来上がっちゃいますよね。
マキマさんの場合だと、「何か目的を持って動いている」ことをチラつかせることで意味不明なキャラでなくなっています。
この「人間らしさ」と「意味不明」の境界を上手く見極めるのが、とりわけ現実世界を舞台にした話だとクソ難しいと思うんですよ。
(僕はこんな創作やったことないのでプロに「簡単だよ〜」って言われたら何も言えないんですけど)
で、『違国日記』は、この境界を見極めるのが非常に上手いです。
登場人物の解像度がフィクションとしての面白さを崩さないギリギリのラインで高い。
マジでこの人たちは現実世界に存在しているだろと思ってしまう。
本編の内容について触れると、主人公は事故で両親を亡くした少女・朝と朝を引き取った伯母・槙生。
朝が槙生との共同生活を通して成長していく物語です。
冒頭で読む人によって 違うと述べましたが、これは朝の視点に立つか槙生の視点に立つかみたいなことです。
僕は半々くらいで感情移入してました。
既刊5巻では、朝が両親の死とどう向き合っていくかが話の本筋になってきます。
両親を亡くした少女が伯母の思いやりに触れて徐々に凍った心を溶かしていく……そんなつまらない話ではないです。
『違国日記』の大きなテーマは、「人と人は絶対に分かり合えない」です。
朝は最初、自分の感情に整理がついていません。
正直微塵も悲しそうじゃないです。
別に両親に虐待を受けていたわけでもないですし、普通の家庭です。
文字だけ見るとサイコ感がありますが、それを全く感じさせないのが上手いです。
やがて朝は時間が経つに連れ、少しづつ悲しみを理解できるようになります。この辺の時間の長さが凄くリアルに感じられます。(詳しいことは分かりませんが)
その間槙生は、朝が自分の感情と向き合う手助けはするものの、決して必要以上に朝に踏み込みません。
槙生は朝の気持ちを分かろうともしませんし、「理解できるはずがない」というスタンスです。
忍野メメも「人は一人で勝手に助かるだけ」って言ってましたね。
朝の話に焦点を当てると、人間が自分で立ち直るまでのプロセスが描かれています。
槙生にも、朝の母の死は深く関わってきます。
槙生は姉に対してトラウマに近い感情を抱えています。
姉の死後、朝から姉の話を聞くと、自分が嫌っていた過去の姉には見えなかった部分が浮き彫りになってきます。
愛情を受けて育った朝とずっと否定されてきた自分の対比ですね。
槙生はそもそも朝を引き取っておきながら、人と一緒に暮らすのが苦手な人間です。
槙生の話は、死んだ姉や朝といった他人に上手く折り合いをつけて暮らしていく、というものです。
家族に思うところのある人なんかは、割と共感できると思います。
この他にも何人かの人物が出てきて、何かしらの悩みを抱えていたり、そういう過去を持っています。
で、大体こんなもんなんですけど、ここまで書いてて思ったのは「大筋の説明はできるけど感情が繊細過ぎて説明するのがクソ難しい」ってことです。
なのでぶっちゃけ本編を読んでください。
とにかく人物の解像度が非常に高く、単に「漫画の住人が漫画の中で救われる」だけではない印象を受ける漫画です。
漫画版心のノートとして是非読んでみてください。
あと、5巻がめちゃめちゃ良いので5巻まで読んでください。
おわり